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カシミールに楽園が再び?
2004.6.29(火) BBC News

ムガル皇帝がカシミールを地上の楽園と描写したのは、数世紀前。
そしてこの数十年間、止まらない暴力が、この地方を地獄にしてしまった。

しかし今年になって状況が変わり、カシミール住民たちは多くの観光客の来訪を迎え、この15年で最も平和な夏を楽しんでいる。


ダル湖 - BBC News

今週末から核保有隣国同士の平和交渉を開始するインドとパキスタン当局にとって、カシミール地方はまさに話し合いの心臓部であり、間違いなく議題の筆頭となるであろう。

多く人々はこの2つの国が、長年続いてきた争いの解決へ向けて共に協力し合うことを望んでいる。

戻ってきた笑顔

インド領カシミールの州都シュリナガル(Shrinagar)中心部には、ダル湖(Dal Lake)がある。

この透き通った美しい湖は、松林に囲まれたヒマラヤのふもとに横たわっている。

夏の夕、旅行者は水面に暖かく反射し揺れる明かりを頼りに、湖上にそっと浮かぶハウスボートへやってくる。

アブドゥル・ラシドさん一家は、ハウスボートを幾代にも渡って所有している。
案内してくれたそのボート、内部はリビングルーム、ダイニングルームは温かみのある木を中心素材に、床はカシミリ・カーペットで覆われている。


photo by BBC

「ベッドルームはとても快適、バスルームは英国調です。」
アブドゥルさんは笑顔で紹介してくれた。
「とても忙しく、うれしい悲鳴です。」

数年にも及んだ争いの後、多くのカシミール住民たちにようやく笑顔が戻ってきた。

そのほとんどがインド人ながら、今年に入ってすでに10万人を超える旅行者(昨年は2万人以下)がカシミールを訪れている。

異国の祖国

シュリナガルのメインマーケットの一商店で、アブドゥル・ハミドさんはラジャスターン州からやってきた家族連れ旅行者の前に、カラフルなショールを次々と広げた。

柔らかい声音だが、セールスピッチには有無を言わさぬものがある。

「奥さん、こんな質の良い物は他では見つからないよ。」
優雅な布地に手を滑らせながら言う。
「純パシュミナ100%だからね。」

ハミド氏はこの夏、大きな転換を感じている。


ムザッファラバードまで70km - BBC

「素晴らしいよ、本当に良い時が来た。多くの人がカシミールを訪れるようになった。ホテルからは人が溢れ、フライトは満席状態。我々にとっては、この15年間で最高の売上げを記録している。」

しかしここはやはりカシミール、除隊軍人とインド軍がしばしば戦闘を繰り返す。

最近は手榴弾の爆発に、5人のインド人旅行者が巻きこまれ死亡する事件が起きており、暴力がまだ遠のいたわけではないことを物語った。

だが今や、訪問者はそんなことでひるまない。

デリーから訪れたスワティさん一家は、ローヤル・ムムターズ・ハウスボートに滞在している。

彼女はカシミールを訪れることに関し、周囲の危険勧告に笑ってこう言った。
「攻撃はデリーでも起こると思うわ、そうでしょう?じゃあ何を心配する必要があるのかしら?」


住民もチェック - BBC

ご主人のニティンさんは、
「ここに来てとてもよかったと思っている。ここはとっても美しい土地で、人々は温かく迎えてくれるよ。」
とカシミールの良さをアピール。

バス・リンク

一方路上では、警備警官隊が厳しく取り締まっている。

メイン道路を通行するバスは全て止められ、乗客の身分証明書や顔はつぶさにチェックされる。

兵士は防弾チョッキを着、自動小銃を構えて怪しい通行人を常に警戒。

ほとんどのカシミール住民にとって、これは日常の光景となっている。
「わたしたちはカシミール人。なぜ地元民の身分証明書まで提示しないといけないのか?」
商店主のシェイク・モハンマド・ユスフさんは憤慨する。

住民の多くは、平和交渉がこの状況を変えることを願っている。

話し合いが持たれる課題のひとつは、シュリナガルとパキスタン領カシミールの町ムザッファラバード(Muzaffarabad)との間のバス運行だ。

山をかなり登った所にある、停戦ライン近くの村に住むリヤズさんは、このラインのむこう側に住むいとこに、かれこれ10年会うことができていない。

「あちら側は、パキスタン領カシミールです。」
2、3km先の山腹に見える、この村とよく似た集落を指差してリヤズさんは言った。

「見ることはできても、歩いて渡っていくことはできないんだ。同じ家に生まれたのに、彼はいまあちら側(パキスタン)に住んでいるからね。」

「訪問するのはあまりにも難しく、そしてお金がかかりすぎる。まずデリーに行ってビザを取り、それからバスか列車で国境を超えなければならない。ほんの20分で着く距離の所に行くために、何千キロもの旅をしなければならないのさ。」

多くのカシミール住民と同様、リヤズさんとその一家は、インドとパキスタンの間で持たれる交渉を非常に注視している。

なぜならこの交渉が良い方向に向けば、家族がまた同じ場所で暮らせるのだから。

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2つの国家の間には、多くの複雑な問題が横たわっていると思いますが、互いの国に家族がいるというような一般住民たちにとって、国家に振り回される運命はあまりにも過酷だと思います。


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